研究の話②

前回は有機薄膜太陽電池のざっくりとした解説でしたね。今回は各層の材料について、自分が使ってたやつをべらべらお話しします。

 

その前に簡単におさらい&ちょい足し。有機薄膜太陽電池の構成はだいたいこんな感じです。

 

透明電極/ホール輸送層/活性層/電子輸送層/金属電極

 

活性層で発生した電子を金属電極から、ホールを透明電極から取り出す構成です。この構造をconventionalとか順積み型とか言います。逆に

 

透明電極/電子輸送層/活性層/ホール輸送層/金属電極

 

こんな構成のものをinvertedとか逆積みとか言います。各輸送層は電子orホールだけを選択的に通す役割なので、取り出す電極はどっちでも良いんです。もちろん電極材料との組み合わせの良し悪しはありますが。

 

まずは活性層材料から。前回のお話の通り、活性層はp型とn型の混合薄膜です。

・poly(3-hexyl thiophen) (P3HT)

代表的なp型半導体ポリマーです。高専〜大学院までほぼずっと使ってました。結晶性が良くホール移動度が高いのが特徴で、他の半導体ポリマーと比べても安くて取扱が容易(溶けやすい塗りやすい)です。安いっても7,8万円/gはしてたけどな。この研究やってるとちょっと金銭感覚バグるので会社でたまに突っ込まれる。チオフェン環の3位にn-ヘキシル基が伸びたやつを2位と5位で重合した構造になってます。この3位にヘキシル基がってのが結構大事で、これが揃ってる(レジオレギュラー)方が特性が良いです。結晶性だったりなんだりが変わるって話だったと思う。3位と4位にランダムについてる(レジオランダム)だと全然ダメだとか(使ったことないけど)、重合に使った触媒のせいでダメな時があるとか、意外とロットごとの差があって振り回された思い出があります。メーカー品っても信用ならんですね。あと分子量も大事、基本的には大きい程よい。その分値段も高いけど、けちって低分子量の買って特性でなかったことがある。貧乏が全部悪いんや…

このP3HTと後述のPCBMというフラーレン系のn型材料を組み合わせてデバイスを作ると、だいたい変換効率3%くらいのものができます。この材料の世界記録は5%ちょい?高専の時に一回だけ単発で5%くらいでたんですけど、再現もできなかったしあれ何だったんでしょうね。今はどうなんでしょうか、まず使われてるのかな。

 

全然関係ないんですけど、生分解性ポリマーの研究してた同期が使ってた材料にもP3HTってのがありましたね。似ても似つかない構造してましたけど。

 

 

あ、これ長くなるやつだ。Twitterと違って文字数制限がないのはいいんですけど、スマホで長々と書くのも疲れますね。一旦ここまで。次回PCBMの話